食育に味わい教育を。食育の資格ならフードコンシャスネス研究所

 

しじみ先生とフードコンシャスネス的こころ
第2回 真水で砂ぬきするとシジミはまずくなる!

shinagawaごきげんよう! 「こころで食べる 味わい教育」を実践している学習院女子大学の品川明です。
今回お伝えしたいのは、おいしいシジミ汁の作り方です。
でも、それをお伝えするには、シジミがどんなところにすんでいて、どんな性質があるのかをお話しなければなりません。
シジミの産地といえば、島根県の宍道湖や青森県の十三湖が有名です。この2つの湖は、海水が混ざっている湖です。塩分の変動が激しく、しばしば酸素不足になってしまいます。
シジミはこのような環境で生存しなければなりません。言いかえれば、シジミは塩分の変動や酸素がない状態にも耐え得る能力があるわけです。
どのようにして、シジミたちは耐えているのでしょうか? 宍道湖のシジミで行った研究をちょっと紹介しましょう。
♪シジミの環境に耐える能力
2-1
出所:『生活紀行』(学習院新書)
通常のシジミは塩分が0.5%前後の、海水が混ざった水に生息しています。
数日間なら淡水から海水まで生存可能な強い貝です。この間ただ貝殻を閉じてがまんしているのではなく、シジミたちは必死で細胞内の生体成分を増やして内部の浸透圧を高め、外部の浸透圧に負けない体をつくろうとしているのです。
このとき、シジミたちが増やしている成分で最も重要なものがアミノ酸のアラニン。その他いろいろなアミノ酸が塩分濃度の違いにより増減することが明らかになっています(図1)。
ビックリするのは、真水に入れるとアミノ酸は激減し、1%程の塩分に浸すとアミノ酸が激増することです。
♪酸素がなくても生きられる
酸素がない状態ではどれくらい耐えられるのでしょうか?
実はシジミは酸素がない環境でも、数日間は生存可能な本当に忍耐力のある貝です。
利用できる酸素がないと、シジミは殻を閉じて周囲の酸素が増えるまで耐えます。なんと水温20℃で8日間、酸素のない状態で生存し続けられるのです。陸上の生物にとっては信じられないことですし、水中の生物でもシジミはすごい能力があると思います。
塩分での適応力と同じで、体の中の成分を駆使して、酸素が足りなくてもエネルギーを生産する能力がある「優れもの」なのです。
その時、体内で増える成分がうま味成分の1つとされるコハク酸です。
塩分の変化や酸素がない状態に対応するため、そして生きるために、シジミは必死にアラニンやコハク酸を増やしています。それをヒトはおいしく食べているわけです。シジミはヒトがおいしいと感じる成分を、生きるために必死に増やしているのです!
なんだかシジミが愛おしい存在に思えてきませんか?
♪耐える性質をヒントに
シジミが環境に耐える性質は、シジミをおいしく食べるヒントになります。
まずは、シジミの砂抜き方法。
多くの料理の本には、「シジミの砂抜さは真水で行います」と書いてあります。しかし、真水中にシジミを入れると、体内のおいしい成分が外に出てしまいおいしくなくなります!
そこで、食塩を水に溶かし(1Lの水に塩約10g)、その中にシジミを入れて6時聞から12時間ぐらい砂抜きしてみましょう。驚くほどおいしいシジミができ上がります。
図でおわかりのように塩水に入れると、シジミ自身がグルタミン酸、アラニン、グリシンなどを増やしていきます。もちろん、これら3つのアミノ酸は旨味や甘味に関与する成分です。
♪空気中に6時間放置
砂抜き後、水からシジミを取り上げ空気中に6時間ぐらい放置すると、一段とシジミの味が向上します。
空気中に放置することは酸素がない状態にすることと似ており、何の道具や塩なども使用しないですむのです。
この緒果、貝の旨味成分であるコハク酸や甘味に関与するアラニンが増えます。これはシジミが生きていないとできないことです。まるで、シジミが私たちの気持ちを察して、「おいしくなってやりましょう」と努力しているかのようです。
♪おいしいシジミ汁に調味料はいらない
2-2
さあいよいよ、砂抜きをしたシジミを使ってシジミ汁を作ってみましょう。
調理方法は簡単。300mlの水に約200gのシジミを入れて、強火で沸かします。沸騰したら中火にし、殻が全部開くのを確認します。あとは、ときどきアクをとるだけ。色と香りと味の三身一体のシジミ汁の完成です。くれぐれも、熱いうちにお召し上がりください。
塩もみそも、調味料は一切使用しません。シジミ汁本来の味と香りをぜひ一度体験してみてください。私がシジミに魅せられてしまった理由をわかっていただけるに違いありません!
次回はシジミが持つもう1つのパワー、「美容への効果」についてお話ししましょう。




ページトップへ