食育に味わい教育を。食育の資格ならフードコンシャスネス研究所

 

しじみ先生とフードコンシャスネス的こころ
第19回 味わう権利がある

ss ごきげんよう!「こころで食べる 味わい教育」を実践しているしじみ先生こと学習院女子大学の品川明です。


 さて、今回はフードコンシャスネス教育の特徴のひとつ、「味わう権利」を紹介したいと思います。食を探究し、味わう能力は子どもから大人まですべての人に備わっており、一人一人が多くの事柄を自覚できると思います。
 味わうとは五感とこころで感じることです。また、多くの繋がりを感じることです。このような感じる力を私たちはきちんと発揮しているでしょうか?


♪多くの食と味を自覚する経験

 1つ目は、多様な食を味わうことです。
 私たちの周りには多くの食物があり、多くのご飯があります。その1つ1つの食物を味わう権利がありながら、その多くを味わう経験が少ないと思います。また、いろいろな味わい深いご飯がたくさんありながら、接する機会が減っていると感じます。食べたことのない食やご飯と出会える機会を増やし、感動する権利を大切にすべきだと思います。
 2つ目は、多様な味を経験し、その価値を知ることです。
 多くの食物やご飯はさまざまな味を私たちに提供してくれます。あるものは甘かったり、あるものは塩っぱかったり、またあるものはうま味があり、コクを感じたりします。食や御飯が多くの味を構成し、生態的にも生理的にも深い価値があることに気づくはずです。
 3つ目は、多様な味の好き嫌いです。
 私たちはいろいろな味を鋭敏に感じる能力があり、その感じる能力は固有のものです。人により感じやすい味があり、感じにくい味もあります。苦味を味わう経験が浅く、感じやすい児童や園児に健康によいから食べなさいという指導は、苦味を感じている子どもの味覚を尊重していないことになるかもしれません。


♪おいしいにはわけがあり、物語がある

 4つ目は、おいしく味わうことです。
 おいしいには理由(わけ)があり、物語があります。この理由と物語をひも解く能力を磨く権利です。
 多くの食やご飯、多くの味を感じながら食べることは大切です。しかし、おいしく味わうとは味だけでしょうか。それは違うと思います。おいしく味わうには、食を自分自身の五感で感じるだけでなく、こころで感じ、多くのつながりをとらえ、物語を読み取れることではないでしょうか。食を感性で捉え、食の物語を読むことを大切にしたいと思います。(詳細は第14回「人と生き物の関係~ひむいよいなむやこと」)


♪おいしく味わうには時間も必要

 5つ目は、楽しくゆっくりと味わうことです。
 食は口を通過し、胃に直行するものでしょうか。お腹が満たされればよいのでしょうか。
 いろいろな食べ方があると思います。ただ、栄養だけを考えれば、食べることで栄養は満たされるかもしれません。
 しかし、食や命の権利(詳細は第19回「食と命にも権利がある」)を尊重する食べ方があるはずです。
 口に入れる前からも食を感じるチャンスがあります。口に入れ、歯で噛んだ時に感じる味や噛み進んでいったときの味の変化、いろいろなことを感じながら食べるには、ゆっくりと味わう時間が必要です。私たちはゆっくり味わう時間をきちんと確保しているでしょうか。
 六つ目は、質のよい食を味わうことです。
 質の良い食とは何でしょうか。
 まず、旬であることや新鮮であることが挙げられます。食(=命)自身が成長しようとか、増やしたいという意志を感じる時が旬です。旬の時期でみずみずしく、ふっくらとした新鮮なものを味わうことが大切です。
 新鮮さを長く保つためにはよい保存方法を知ることも大切です。傷めて質を悪くしてしまうのも、人。その場合は、おいしく食べられるように別の料理に仕上げることも必要です。


♪地域の味わい、他者の味嗜好を尊重する

 7つ目は、郷土や地域の味わいを尊重することです。
 郷土や地域の食が醸し出す味わいは独特で、そこにも歴史や物語があります。また、文化の中心でもあります。

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 日本には昔からの伝統食品がたくさんあります。例えば、伊豆諸島のくさやなどです。発酵が進んだつけ汁にムロアジを漬け、干したものです。くさやは匂いがきつく、口に入れ難いのですが、一旦口に入れると噛むごとにうま味と塩味が匂いとともに広がり、独特の味わいがあります。このような地域の味わいを尊重する姿勢が大切だと思います。
 8つ目は、自分以外の人の味嗜好を尊重することです。
 フードコンシャスネスの教育の特徴のひとつに、自分の感性を鍛え、味わう能力を培うことがあります。自分自身を鍛錬することも重要ですが、他者が感じる味わいを否定するのはいけません。自分が感じたことが正しく、他者の感じたことは間違いであるなど、食には決してあてはまりません。
 味わう権利は自分だけではなく、すべての人にあると思います。他者の食嗜好や味嗜好を尊重し、味を感じる多様性を大切にしたいですね。
 食や命の権利を尊重し、味わう権利を発揮する食べ方を意識してみてはいかがでしょうか。このような食への想いもまた、人の意識改革へと発展し、社会性や市民性が育まれる根本だと思います。
 
 それでは、ごきげんよう!

 

 




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