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しじみ先生とフードコンシャスネス的こころ
第13回 シジミを食べることの意義について

ss ごきげんよう!「こころで食べる 味わい教育」を実践しているしじみ先生こと学習院女子大学の品川明です。
 今回はシジミを食べることの意義について考えましょう。

 まず、日本で最もよく食べているシジミはヤマトシジミ(以後シジミとよびます)という二枚貝です。このシジミが生息している場所は塩分が変動しやすい汽水湖や河口付近です。日本では北海道から九州の各地に生息します。その代表が青森県の十三湖や小川原湖、島根県の宍道湖です。

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 シジミが生きている場所は人の生活環境と密接な関係があります。このような汽水域の河口や湖沼は生物多様性、生物生産機能、環境浄化機能を維持している豊かな里湖です。漁業資源として食糧を供給する場所でもあります。


♪食べることにも糞にも役割が


 シジミの役割を考えてみましょう。
 シジミも動物なので、生きるためには食べ物を食べる必要があります。この当たり前の食べる行為やそれに伴う一連の行動が、シジミのものすごい役割を示しています。シジミの食べ物は、湖に漂う植物プランクトン。実は、この植物プランクトンは湖にとっては、水を汚す原因になるのですが、シジミが食べることで水がきれいになるのです。これはシジミの浄化機能と呼ばれる、一般には「ろ過」とも言います。
 食べ物を食べれば、必然的に糞を排出します。その糞がまたすごいのです。写真1はプランクトンを食べた後、約5時間の糞です。この糞は緑色でプランクトンが濃縮された未消化のペレット状のものです。これを顕微鏡でのぞくと、生きたプランクトンが動き回っています。
 写真2が5時間後以降の糞で、褐色の消化されたものです。どちらもシジミの回りに生息している生き物(ゴカイ類、エビ・カニ類、魚)にとって絶好の餌になります。他の生き物にエサを与えている生き物なのです! そのことによっても、一段と湖の浄化に役立っていると思います。

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♪湖底に酸素を送る


 次に、「撹拌」という役割についてです。
 シジミは湖底の砂泥内に潜ってすんでいます。そのために、砂の中に潜る行動、いわゆる「潜砂」をします。この行動は湖底の砂や泥をシジミがかきまぜ、湖底に酸素を供給する役割があります。その結果、湖底のヘドロ化を防ぎ、他の生き物にとって棲みやすい環境を作ることになります。
 もうひとつ、「保持」という役割もあります。シジミはリンや窒素などの有機物をからだの中に取り入れ成長します。その結果、リンや窒素を比較的長い時間蓄える役割があります。
 もし、シジミがいなかったら、その分の湖水や底質にこれらの有機物がたまってしまうわけです。


♪経済的な役割にも重要な価値


 最後に、忘れてはいけないシジミの重要な役割がもうひとつあります。
 それは、私たちや鳥たちに食物としておいしさや命を与えたり、経済的な役割を人々に供与してくれることです。シジミがそのおいしさゆえに漁業が成立することにも重要な価値があります。
 シジミを獲ることは、湖という生態系から陸上という生態系にシジミを移動することになります。その結果、シジミによって保持された湖全体のリンや窒素がはじめて湖から除去され、浄化が完成することになります。
 シジミだけで湖が浄化できるのではなく、シジミがおいしいからこそ、シジミを経由して人や鳥がシジミを食べるからこそ、湖を浄化できるのです。
 また、シジミを湖底から漁獲する際にジョレンという道具を使います。これは湖底をシジミ同様に撹拌することになります。湖底をかき混ぜることで地盤を改良し、たくさんの生き物がすみやすい環境を作り、生物多様性に貢献しているのです。

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♪シジミを通して流域全体に思いを馳せる


 私たちは普段、シジミを単に食材として見ることがほとんどです。生活者の役割として、シジミの役割を理解し、漁業の価値と役割を時には考えてみてはいかがでしょうか。食べることで私たちの命を繋ぐだけでなく、湖の環境を改善し、流域全体に思いを馳せる感性も育てることができると思います。
 このような感性は、人間だからこそ持てる能力でしょう。この能力使わないともったいないとは思いませんか? 食べ物を通じて、人間の能力と役割を深く認識する力が育まれるのだと思っています。

 次回は、人と生き物の関係についてお話したいと思います。

 

 




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